あなたは、本当に被害者遺族の気持ちを共有していると胸を張れるのか? もし、そう言い切れるのなら、それこそ不遜だ。
被害者遺族の深い悲しみや絶望、自分を責める罪の意識や底知れない虚無を当事者でない者がリアルに共有することなどできるはずがない。
しかし、この国ではそうした叫び声が日に日に高まっている。
「正義」という善意に突き動かされ、「この社会を脅かすものを駆逐しなければならない」とばかりに厳罰化が進み、さらには中国、韓国を仮想敵国とする強い自衛意識が生まれている。
この7月、参院選では改憲を唱える自民党が圧勝した。この国は今、どこへ向かおうとしているか。取り返しのつかない事態を避けるために、今何ができるのか。
愚直なまでに問い続ける渾身の作。