巻頭コラム No.155


  5月13日に行われた「シンポジウム─浅間山荘から四十年 当事者が語る連合赤軍」は、とても意義深い催しだった。

  連合赤軍事件の本質は、あさま山荘ではなく山岳ベース事件にある。でもあまりに凄惨すぎるため、多くの人々は目をそむけようとする。 わかりやすく加工しようとする。事件直後のメディアは、指導者の位置にいた森恒夫と永田洋子の二人が、異常な支配欲や権勢欲、 さらには嫉妬や保身など個人的な欲望を燃料にしながら他のメンバーたちの心身を支配して互いに殺し合う閉塞的な状況を作りあげたなどと要約し、 裁判も大筋としては、この構図に合わせるかのように進行した。

  それから月日は流れ、二人の指導者はすでにこの世にいない。森は逮捕から一年経たないうちに拘置所で自殺して、死刑判決が確定した永田は昨年獄死した。 でもこの間に、逮捕された元兵士たちは徐々に出所して、そのうちの何人かは重い口を開き始め、事件の全貌が多くの視点から明らかになりつつある。

  なぜ事件は起きたのか。なぜあなたたちは同志への総括を続けたのか。あなたたちが処刑されなかった理由は何なのか。森や永田に対して今は何を思うのか。

  これらの質問に対して4人の元兵士(二人は革命左派で二人は赤軍派)は、マイクを手に絶句する。あるいは考えこむ。互いに意見が食い違う。必死に記憶を振り絞る。

  初めての処刑は革命左派によって行われた。永田洋子が森恒夫にどうすべきかと相談したとき、「処刑すべき」と森は答え、永田たち革命左派は実践した。 その報告を聞いた森は動揺し、赤軍派の側近だった坂東国男に、「まさか本当にやるとは・・・」的なことを口走っている。

森や永田に支配され一方的に強制されたのではなく、むしろ自分たちが森や永田を追い込んだ要素もあるのかもしれないと語る元兵士たちの言葉は重い。 『A3』を書いた僕としては、まさしくデジャヴ的な証言だ。すべての組織共同体が内包する普遍的な負のメカニズムであり、何度でも繰り返す歴史的な過ちでもある。 マイクを握りながら4人はつらそうだ。じっと俯いている。でもこの場から逃げない。沈黙しない。必死に記憶をたどっている。言葉を紡ごうとしている。

そんな光景を眺めながら、オウム事件の場合には2030年に、このようなシンポジウムが行われるだろうかと考える。おそらく、というか間違いなく無理だ。 だってオウムの場合は、主要な事件の当事者のほとんどに対して、死刑判決が下されている。 精神が崩壊したまま被告席に座らせられ続けた麻原も含めて、質問に答えられる人がいない。

だから考える。もしも連合赤軍事件がオウム後に起きていたら、彼ら革命兵士の多くは、当然のこととして死刑判決を受けていたはずだ。 厳罰化はそれほどに進んでいる。それによってこの社会は、学んだり考えたりする機会を失い続けている シンポジウムはこれからも継続して行われる。ぜひ多くの人に参加してほしい。元兵士たちの証言を聞いてほしい。

全体像を残す会


極私的メディア論 第66回 誘導される民意(『月刊『創』4月号掲載)
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極私的メディア論 第65回 論争以前の二人(『月刊『創』3月号掲載)
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2012.5.16 森達也   

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2012/5/1 巻頭コラム No.154更新


2012/4/30 [書籍・連載]更新


2012/4/30 [記事掲載]更新


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2012/4/8 [書籍・連載]更新


2011年7月15日に「A3」が講談社ノンフィクション賞を受賞しました。
http://www.kodansha.co.jp/award/nonfiction-essay.html



共同監督作品『311』の劇場公開が決定しました。
http://docs311.jp/

2012年5月11日(金) 「山平を語り、唄う会」in 阿佐ヶ谷ロフトA
【出演】和久井光司(総合音楽家)、浦沢直樹(漫画家)、森田貢(マイペース)、とうじ魔とうじ(特殊音楽家、パフォーマー)、藤澤るみ(歌手)、森達也
主催:エスオーエス 協力:河出書房新社、ブリッジ
Open 18:30 / Start 19:30
前売り¥2,800/当日¥3,300(共に飲食代別)阿佐ヶ谷ロフトA

2012年5月13日(日) 「シンポジウム─浅間山荘から四十年 当事者が語る連合赤軍」
時間:13:30~18:00
会場:目黒区民センターホール
【出演】馬込伸吾、塩見孝也、鈴木邦男、三上治 雨宮処凛、ウダタカキ(吉野雅邦役で出演の俳優)、大津卓滋、田原牧、山本直樹、パトリシア・スタインホフ、ピオ・デミリア、森達也 他
renseki.net

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新連載 「私たちはどこから来て、どこへ行くのか」
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連載 「風の言葉 石の声」
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『311』というタイトルの映画に賛否 被災者にカメラを向け「自分がハイエナのような自覚がありました」と監督が吐露(シネマトゥデイ)
http://www.cinematoday.jp/page/N0036032

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〈特別企画〉東日本大震災 対談・佐野眞一×森達也「がんばろう、ニッポン!」の危うさ

TOKYO FM(80.0MHz)「未来授業」
8月8日(月)~11日(木) 18:45-18:50
※TOKYO FMはPCやスマートフォンでもお聴きになれます。→ radiko.jp(関東エリアのみ)
※放送された内容は、Podcastでもお聴きいただけます。→ http://www.tfm.co.jp/podcasts/future/

THE JOURNAL【NewsSpiral】(4/13)森達也:震災
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/04/post_751.html

『婦人公論』(中央公論新社)2011年3月22日号 >> Amazonリンク
徹底検証 獄中手記出版に賛否両論!市橋達也は、心から悔いているのか?
〈「事件」が消費され尽くす日本で〉僕には騒ぎ立てる社会のほうが不思議だった (森達也)

『大澤真幸THINKING「O」』(左右社)7号 >> Amazonリンク
森達也×大澤真幸「死刑をゼロから考える」
http://sayusha.com/sayusha/903500393.html

BPnet「ゆとり世代、業界の大先輩に教えを請う」
オウム真理教の『A』『放送禁止歌』の森達也さんに聞く
~「現場ってなんですか? 編集ってなんですか?」
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100415/221588/(前編)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100416/221875/(後編)

『マガジン9条』
蓮池透さん×森達也さん 「拉致」解決への道を探る
http://www.magazine9.jp/taidan/006/

第四十三講 森達也選 「死と生」
紀伊国屋本店「じんぶんや」で選書とエッセイを執筆
http://bookweb.kinokuniya.jp/bookfair/prpjn431.html

森達也×香山リカ「死刑制度から考えるメディアと日本社会」
立教ジャーナル('08.7.1.)Vol.3
http://www.asahi.com/ad/clients/rikkyo/taidan/taidan03_01.html

マガジン9条「この人に聞きたい」インタビュー
http://www.magazine9.jp/interv/mori/mori.php



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